野犬達の救世主 命がけのメッセージ
- weloveyaken
- 3月21日
- 読了時間: 6分
つむぎの活動エリアに、野犬が群れとなって生活している地域があります。捕獲開始当時、目視できるだけで10頭以上の中型〜大型の成犬と、その成犬達から生まれた仔犬(頭数不明)が生息していました。野犬達が人を襲うようなことは一切ありませんでしたが、近隣住民から保健所に通報があったことで捕獲器を置くようになり、次々と捕獲されていました。
その頃、野犬は人馴れが難しいと言うだけで殺処分対象となっていたため、つむぎは野犬が殺処分されないように、積極的に野犬を引き取って人馴れ訓練をし、里親へと繋ぐ保護活動へと舵を切りました。そんな時に出会ったのが、今回のててちゃんです。

2020年夏、保健所から間も無く出産を迎えそうな母犬が捕獲器にかかったと連絡が入りました。つむぎは母犬を引き取り、これから生まれてくる仔犬共々お世話しようと引き取りの準備を進めていました。その矢先、母犬の出産が始まってしまいました。布一つない床も壁も冷たいコンクリート打ちっぱなしの犬舎で仔犬が産み落とされてしまったのです。そのことに気づいた職員さんが急きょブランケットを敷いてくれました。最初に2頭出産。翌日に4頭出産しました。全く知らない場所に運び込まれ、不安と恐怖がピークに達し産気づいたのかも知れません。

私達が保健所へ駆けつけた時には、既に1頭亡くなっていました。嫌な予感がし犬舎に入れてもらうと、更に1頭亡くなっていました。他の仔犬たちも、母犬から離れた場所でぐったりして呼吸も浅い状態でした。母犬の側に置き直しましたが、敷いているブランケットは、出産で汚れ濡れたままです。コンクリートの床からの冷えを防げるものではありません。
それにどの仔犬も糞尿まみれ、冷たい犬舎の中でどんどん体温が奪われていく状態でした。この状況を目の当たりにし、こんなことになるなら出産し子育てが終わってから捕獲器に入って欲しかったと思いましたが、仕方ありません。生まれてきてくれた仔犬たちを救うことに気持ちを切り替え、職員さんに懇願してグッタリしている4頭を動物病院へ搬送しました。

獣医さんに診てもらうと、残った4頭のうち3頭は低体温で危険な状態との事で、すぐに手当が始まりました。

保健所の犬舎にいる母犬が心配になり確認を取ると、出産を終えたはずなのにまだお腹が大きいままで、ご飯も食べない状態だと聞き、仔犬を搬送した動物病院へ同じ日に搬送しました。首輪もリードも抵抗することなく大人しくつけさせてくれました。バリケンにも嫌がることなく素直に入ってくれたので、病院への搬送もスムーズに行うことができました。

母犬を診察すると、お腹にまだ2頭の赤ちゃんがいると分かり、緊急手術となりました。

開腹すると、子宮の炎症が見られ、その2頭はお腹の中で亡くなっていました。生きて取り上げることが出来ず残念でなりませんでした。診察して分かった事ですが、母犬の後ろ右足がパンパンに腫れ上がっており、またその足の肉球がめくれていました。捕獲器にかかった時や犬舎に移る際にパニックで暴れて怪我をしたのかも知れません。痛かったはずです。
さらに、開腹した時には(*最後に画像掲載)重度の膀胱炎で、膀胱がパンパンに腫れ上がっていたのです。
獣医さんによると、捕獲されたショックと、慣れない保健所の環境下でオシッコが出なくなってしまっていたことが原因の膀胱炎かもしれないと、そして病状に気付けないまま、よくない環境で長く放置されたため症状が進行したのだろうとの事でした。
獣医さんや看護師さんに最善を尽くしていただきましたが、搬送したうちの3頭の仔犬と母犬、そしてお腹の中の2頭が亡くなってしまいました。保健所で亡くなっていた仔犬を含め授かっていたのは8頭。そのうち1頭のオスだけ奇跡的に生き残ることが出来ました。
その子には縁(えにし)と言う名を付け、つむぎの保護っ子となりました。

そして、亡くなった母犬に「てて」と名付け、亡くなった仔犬7頭と一緒に見送りました。

ててちゃんは、私たちが犬舎に駆けつけた時、自分の体も重症で辛いはずなのに、既に亡くなっている我が子を懸命に舐めていました。その姿が目に焼き付いています。亡くなっているとわかっていても母犬として仔犬にしてあげられる精一杯の愛情を注ぐようなその光景をまのあたりにし、とても無念だったのだろうと思うと今でも涙が出ます。
さらに、最後に奇跡的に生き残った縁(えにし)君も2週間後に亡くなってしまいました。
初乳を飲めていないので抵抗力が弱かったのかも知れません。みんなの分も生きて欲しいと思っていただけに残念でなりませんでした。
この親子を救えるチャンスはあったはずなのに、救えなかった事が悔しくてなりませんでした。今回ててちゃんの引き取りを希望した時から、ててちゃんは私たちに身をもって野犬の現状を教えてくれていたのかも知れません。どうすればててちゃんのような結末にならずに保護できるのかを考える機会を与えてくれたのです。
そこで今回のことを踏まえて、一頭でも多くの命を救うためには、やはり私たち愛護団体と保健所との協力体制が必要であると再認識し行動に移すことにしました。
ててちゃんの経緯を保健所の皆さんに伝え、手当にあたった獣医さんからも病院に搬送されてからの全てが、保健所に報告されました。そして今後のことを話し合いました。
あのエリアに残っている全ての野犬の保護と里親への譲渡につなげるために、私たちつむぎと保健所が情報共有をしながら、相談しあって、全頭捕獲していこうと。
そうして立ち上がったのが「野犬全頭救出プロジェクト」です。
プロジェクトを立ち上げて4年目、ボスと名付けたオスを皮切りに、姫・ミミ・岩下の妊娠中のメスの捕獲。オザワ(オス)・爽風(メス)・ガン(オス)と順調に捕獲。つむぎっ子として譲渡会に参加し、ミミと岩下は既に譲渡しました。
捕獲しなければならない野犬は、残すところリキと名付けたオス1頭となりました。
ててがキッカケになったプロジェクトで、その仲間たちは確実に幸せを掴んでいます。
最後に、ててちゃんの死因の原因の一つでもあった膀胱炎の治療の様子を掲載いたします。開腹手術により、尿で腫れ上がってパンパンになった膀胱から懸命に尿を排出させる処置を行なっている画像です。気分が悪くなられる方はここで閲覧を終えて下さい。
閲覧注意です。
尿でパンパンの膀胱

膀胱から尿を押し流して排出させている処置

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